マルー・クインクエ【動き出すクインクエ】・・・8

「ただいまー…あれ?」
講習から帰って来たれいりは玄関先から漂う匂いに何だろうなと台所へ向かう
「ユキちゃん? 何か作ってるの?」
「あ、お帰りなさい」 さっ
れいりが来た事に気付きさりげなく服の中に何かをしまい込むが背中を向けていた為にれいりは気付かない
「甘い匂い…何だろ?」 ジャム? ソース?
「煮詰めすぎて失敗したんです……」
使用した調理器具や食器をカチャカチャと洗うユキ。身長が足りないので台に乗り困り笑いでせっせと洗っている
「じゃ、残った材料で何かお菓子作っちゃお」 何出来るかなー
「えっ―――はい…」
テーブルの上にある残り物を見て、れいりは慣れた手付きでエプロン、髪を束ね、マルーから貰って来た紙を側の棚に乗せクッキー作りを始めた。
どんどんプレートの上に生地が並べられるのを見てたユキだが、棚の上に置かれた紙を見つけると手に取り食い入る様に見つめている
「ユキちゃーん、今日の晩ご飯何しよっか」

「…ユキちゃん?」

反応が無かった為振り向くとユキがじっと紙と睨めっこしているのに気付く
「あっ、その人発明世界から逃げた悪い人なんだって。ユキちゃんも見かけたらすぐ誰か大人の人に言ってね」
「……はい」
ユキが見てた紙は指名手配中の“メレ・ゲレフ”。マルーで配布され目を通す様にとれいりは持って来ていた
「まぁ、私も見つけたら即通報しないとだけど。マルーなのに…一般人員だしねー」 炒飯にしよっか
「お姉さんの叔母上はお強いのですか?」 はい
クッキー作りも終わり次は晩ご飯作りに取り掛かる。ユキも皿を出したりと手伝っていた
「おソノさんは怪物並み。一般の男の人四・五十人束なっても負けないかもしれない」
「…凄いですね……」
「何でこんなにおソノさんと私って違うんだろ、ある意味笑っちゃう。アハハ」
れいりがフライパンを器用に動かすと芳ばしい匂いが台所に充満した。
会話しながらの料理は衛生上考え物だがれいりは話し相手がいる事が嬉しくとても楽しそうだ
「…ボクはお姉さんの方が強いと思うのですが……」
「へ? 私!?」
準備が整い椅子に座ると二人はいただきますと挨拶し食べ始める。クッキーは食後に食べる模様
「私が出来る事って回復くらいしかないよ…」 火の法は上達しないし
自分で言うのも憚れたが、そこまでの能力は無いと言い切る。ユキは笑顔で料理を頬張っていた
「きっといつか枷が取れる時が来ます」
「……」 難しい事をおっしゃってる
大人びた口調にキョトンとするが、ユキの言葉を考えぼんやり上を見た

「枷かぁ」

この記事へのコメント