マルー・クインクエ【洗礼】・・・1

(すっごい豪華な部屋……お風呂もある…)
れいりは夫人によって案内された部屋をあちこち見回っては驚いていた
(ここってお客様用なんだ…きっとお金持ち向けの…)
一通りぐるっと見てリビングに戻り全体を眺める
(…広すぎる……)

(あんまり広いと落ち着かない……クマ…持ってこよっかな…)


ガチャ ガチャ
〈いざない、来たぞ~~~ックも~~ほ…い〉
〈!!〉


「ソルム、家にクマ取り…」

パタン
「?」
れいりが扉を開けると同時に隣の扉も開き、いざないとディックを含め四人がマルー館内へと歩いて行く
(皆どこ行くんだろ…? インさん戻ってきてる)
「プリセプス、家に行くのだろう。こちらから出入りしろと言われてる」
「あ、はい」
扉越しに『?』で四人を見ていたが、ソルムが反対側へと歩いて行ったのでれいりも後を追う

          *

カチャ

マルー館内のとある個室。
中央には布を纏ったMの姿があった
「聞いたわよ~、いざない。れいりをマルーに留める等価として命を賭けたんですって?」
「ああ」
「なら私に命預けたも同然ね♥」
布の隙間から覗く横に広がる口元は不気味さを感じさせる。
いざないは負けじとMを睨んでいた
「そうだ! さっさとやってくれ!! まどろっこしいのは嫌いなんだよ!」
「潔いのは好きよ♥ いざない♪」

〈え? えっ?〉

目前まで音も出さずに近寄るMにいざないは体を強張らせる。
近くにいたディックは挙動不審気味になった
「M! 何度も言うがいざないは女帝の嫡子だ。いざないに何かあれば女帝とて黙っていない、今まで築いてきた明暗の関係は一気に崩れてしまう」

〈お、おしおきなの?〉

Tの忠告がMに向けられる。
ディックは両手を顔に持って行き怯えだした
「考慮した上で……ほどほどに…頼む…」
「そうねえ。回復しながらでもいいわよ♥」
「!」
「痛い・回復・痛い・回復・痛い・回復~~etc. ウフフフ♥」
「一気にやれよ!!」
チクチク攻撃にギョッとなるいざない。
インは青ざめ汗が出ている
「命を賭けて守るって言ったのは買ってあげる♥」
Mの両手がいざないの肩に回る
「…そう」
顔が触れ緊張が走るが、笑ってるMの布越しから見える瞳は翳り寂しげだ

「あなたもTと同じなの」 ポソ

耳元で囁かれるMの声。
いざないは目を見開き頭の中が真っ白になった

カプ

ふいに右頬を軽く噛みつかれるといざないに痛みが襲い掛かる

じゅっ

頬は爛れ火傷が広がる。
Mは楽しげに笑い、いざないのまだ綺麗な部分をペロペロと舐めだした
〈くすくす〉
「~~~やめて…やめて…」
周りから見ても分かる痛々しさにディックは首を振り涙を浮かべ声を上げている
「M、それくらいに」
Tの制止の声をきっかけにMはいざないの口へ噛みついた
「M!!」

バッ! ハラ…
「……!」
止めに入ったTへ法が放たれTの首元を掠めた

ボタ…ボタッ ボタボタッ

顔とは比べ物にならない大量の血が床へ落ち溢れていく
「ディック、Mを止めてくれ!!」
「ミング・カピト!!」
止められなくなったTの代わりにディックが走り出す

ガシッ
「!?」

いざないの手がMを掴む。
真っ直ぐにMを見るいざないは屈さない姿勢を取り、その瞳をMは瞬き一つせず受け止めていた

じゅわああああっ

Tは息を呑み微動だに出来ない
「離れて―――!!!」
バッ
「!」
「イン!!」
Mの両肩を掴んだディックはMをおもいきり動かしいざないから引き離す。
いざないはそのまま前へと倒れた

「…良かったわぁ♥」 くすくす

「半分でも女帝の血って凄いのね♪ T、あなたくらい刺激的だったわよ♥」
「…」
Mの口から大量に血が流れ衣服を真っ赤に染め上げていた。
焼け焦げた臭いが充満する部屋で虚ろな瞳をしたMは笑い嬉々としていた。
Tは目を伏せ辛そうに眉を寄せている
「ディック、服の血に触ると痛い思いするから離れなさい♥」
「う…」
肩をずっと掴みMから離れないディックは、涙目になりつつもMの掛け声と共に両手を離す。
自由になったMは『くすくす』と陽気に部屋から出て行った

パタン

扉の近くへ行きディックは顔を袖で拭っている
「イン?」
「…」
回復を続けていたインの様子がおかしい事に気付く。
法を受けていたいざないの顔から眼鏡がコロンと転がるが、眼鏡が外れてもいざないの髪が変わらない事にTはハッとした
「イン!!」
「分かってる!」
インは即防衣を脱ぎ大きく深呼吸

フゥッ

内側からも回復をさせる為口移しで法を送り込んだ
「…いざない……?」
異様な空気にディックも気付きガクガク震えている

サアアア

数分後、いざないの髪が赤く変わった事で回復が終わった事を知るとインは『ほ…』と安堵した。
側にいたTは緊張の色が隠せない

パチ
「………気絶したのか」

目覚めたいざないは肘に力を入れ上半身を起こす
「呼吸も止まってた」
「は!?」
自分に起きた事に仰天
「何故挑発した、じっとしてればすぐ終わったものを…肝を冷やしたぞ」
「…してやられんのもしゃくだったんで」
「……」
Tのお叱りにやや反省
「とにかく部屋で休んでいろ、立てるか」
「…ああ」
〈よかったぁ…〉 だー
Tから眼鏡を受け取り起き上がる。
ディックは滝の様な涙を流し震えていた

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