マルー・クインクエ【洗礼】・・・2

両手に一メートル丈のクマのぬいぐるみを抱え、れいりは小走りで部屋へと向かっていた
(戻って来た…)
出て行ったいざない達が部屋の中へ入る所と遭遇
「え…!」
少しではあったがいざないの外套部分が真っ赤になっている事に気付き立ち竦む


「…! ディックさん!!」
いざない達が部屋へ入ってしばらくするとディックが嗚咽混じりに歩いて来たので駆け寄った
「いざないどうかしたんですか!?」
「……」
涙が止まらないディックの前ですこぶる動揺したれいりが訊ねてくる

『あいつには何も言うなよ! これは俺の問題だ』

「ゴメンね…言えないの」
「え…」
いざないの忠告が頭を掠めディックは首を横に振る
「そ…ですか」
事情を知りたかったがマルーの規定で深入り厳禁と言う約束を叩き込まれている為れいりはあっけなく引き下がる
「それ、れいりの? かわいいね」 くまさん
「はい、小さめですけど」
れいりが抱えていたクマのぬいぐるみに気付きディックは頭を撫で始めた
「…」 しゅん
(何だかディックさんの様子が…泣いてたし…)
撫でてはいたがしょんぼりしてるディックにれいりはクマを前に出す
「今日一日うさぎさんと交換します?」
「いいの?」
「はい、小さくても良ければですが」
ディックとの共通点、ぬいぐるみコミュ。
ディックは素直に受け取ると笑顔が戻った
「じゃ、うさぎさん持ってくる♥」

カチャ
「わーい。れいりの匂いだー」

「え!!?」
喜んで部屋へ行きうさぎを持ってくる
(洗ったから洗濯の匂いだよね…) 焦った…
ドア入口で手を振り見送るディック。
黒うさを受け取ると照れながら部屋へとれいりは戻って行った

          *

パチ

「眠れないの? いざない」
「……」
真夜中、いざないは浅い眠りから急に目を開く。
いざないとディックは隣同士に設置してあるベッドで寝ている。だがカーテンで遮られ最低限のプライバシーは守られていた。
ディックは倒れ込む様にベッドに入ったいざないを心配してカーテンを半開きにし、ぬいぐるみを抱えてじーっといざないを見ていたらしい
「精神的に来るもんあってまあ…至ってさっきの事じゃねーから気にすんな」
「ゴメンね」
見られてた事に気恥ずかしさを感じたか、右横の壁に視線を移している
「ミング・カピト、本当はあんなに怖い人じゃないんだ。本当はもっとずっと優しくて皆の事大好きで、人が傷つくのも嫌がる人なのに…」
ぬいぐるみをぎゅーっと締め付け涙目
「…私、いざないが死んじゃったら、ミング・カピトの事きっと許せなかった……」
「…それだとMと同じになっちまうだろ」
「何で暗だと怖くなっちゃうのぉ…あんなに優しい人なのに…ゴメンねぇ…」 うる
再び涙が溢れポロポロ零れ出す
「Mがいい奴なのは知ってるよ」
「え」
「だからTが惚れたんだ」
気恥ずかしさが治まったいざないは天上を見ると、右手甲をおでこに持ってくる
「Mを昔のMに戻そうと必死なんだ」
「そっかあ……でも、程が生まれちゃう…」
「ああ。その為の“先への希望”だ」
「…」
涙が止まったディックは、ぬいぐるみに込めた力を緩め軽く抱きしめる
「…完成させたいなぁ………」
「…だな」
寝返りを打ったところ、いざないの視線がぬいぐるみへと行く
「縮んだのかそれ? ビミョーに違うぞ」
「これ?」

「れいりのくまさんと一日交換したの♥ れいりの匂いするから安心する♥」
「……」
ぬいぐるみの匂いを存分に嗅ぎご満悦。笑顔のままディックは眠りについた。
いざないは眠りに入ったディックとクマを見続ける

『クマ――――!!』

クマから通して幼き頃のれいりが大喜びではしゃぐ情景が見えてきた

シャッ

寂しげに目を細めたいざないはカーテンを閉じ再び浅い眠りへとつく

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