マルー・クインクエ【執行】・・・10

――夜

「私がいますので休んで下さい」
「仮眠後すぐ戻って来る」
「はい」
マルー入口、人員は引っ切りなしに動き回ったせいか疲労が見えていた
「今は少ない。君達も仮眠を取ってきたまえ」
「はい」
医務員スタッフ数名が残り、他マルー人員は眠りにつくため寮へと帰っていく。
その中にれいりもいた


「……」
派長室の前を通ると扉隙間から明かりが漏れている事を知り立ち止まる


「プリセプス」
「…はい」
ソルムの声でれいりは部屋へと向かった

         *

――三日目早朝

「皆不眠不休で動いている……けど、この進み方だと…」
腕組みしたジンホウが厳しい表情で地図を見ていた
「この場所まで回らなくなりそうだ…」
明るく光る地域は変化界よりの混溶地域
「……」
(水で無く食品から摂ってるのであれば……抗体液を摂取しない…か………それとも…)
その地域の生活スタイルを考えている。
交通の便も良いとは言えない地域、その場所にこれだけのアメの存在がある事に疑問を感じていた

フッ

「!」
見ていた地域の光が一気に消える
「おはようございます」
「おかち夫人、この場所に向かった車輌は」
「…ありません」
「…」
指定した場所を確認する夫人
「ジンホウさんもお休み下さい。後は私が」
「…そうですね、それではお言葉に甘えて」
夫人に引き継ぎジンホウは用意された部屋へ

コツコツコツ
「……」

パタン

眼鏡、着衣を脱ぎバスルームへ入った
「………ああ、なるほど。そう言えばもう一人いた」
考えていた事に答えが出るとスッキリした顔で笑い出す

「やりますね、ゲレフさん」



光が消えた地域の高台で初老の男が村を見下ろす。
空には翼の付いた小型のマモノが大きな袋を持ちパウダー状の粉を振りまいていた
「コケにしおって………お前等の思うようにはさせんわ」 くく…
目は大きく開かれ怪しく笑う。
感情の無い声を出しマモノが撒いてる姿を淡々と見続けていた

         *

ピラ
「ミクロベー、どう言う事だ?」

広報で配布された『毒物 速やかに検査を~』と書かれた紙を指で挟み、笑いながらミクロベにピラピラと見せつけている
「…」
「お前のそれに入ってる物すぐバレてるじゃないか」
「気付かれる前に実行したいから一日だけだったのに…何故かしら」
「予はそんな事を聞いていないぞ」
戦人の一人、オールバック風の男が寄せ集めの暗人達に囲まれ優雅に笑う
「なあ、落胆させないでくれ。ミクロベ」
指から離れた紙が宙を舞う。
今まで戦人の隣にいた女(ミクロベ)の視線は対面する戦人の隣へと向く。そこには新たに違う女が口角を上げ、くすと冷笑を浮かべていた

「そうね」

背中を向け出て行くミクロベ。
その間を一枚の紙が横切り落下していく

         *

「マヌイと街は終息したそうだ!!」

わっ

「みんな良くやった」
吉報を受け医療スタッフとマルーが手と手を取り合い大喜び
「我々は応援に行こう!」
「はい!」
医療スタッフ六人がパンダ二機を持ち動き出す
「残った医員三人は元の仕事に従事! 回復が必要な場合はこうですさん、お願いします」
「はい!」
「は…はい!」
任されたれいりは遅れて返事、慌ただしく次の準備が始まった
「各地域で次々と終息しています」
「応援に向かった異物(パンダ)を含めると期間内に全て終わりそうですね」 ほ…
光る面積が狭くなった地図を見て夫人は大きく息を吐く
「変化世界が少なかったのが助かりました」
「消化出来る体質の人が多かったのでしょう、興味深い人達だ」
ジンホウは調べたいような口ぶり
「後は僕が見ています。おかち夫人はお休み下さい」
「それではよろしくお願いします」
ジンホウに後を任せ夫人と派長は自室へ向かった

パタン
〈おかちちゃん体大丈夫?〉
〈心配いりません〉 カッカッカッ
夫人のヒール音が通路に響く

「………」
休むために戻って来たれいりは夫人達を見かけ目で追っていた
(ジンホウさん、今日も夜通し…)
派長室の明かりが漏れている事を知ったれいりは来た道を戻っていく
「プリセプス?」
「ちょっと寄りたい所あるの」



「あの、ジンホウさん」 コンコンコン
ノックに気付き扉を開ける
「れいり君? どうしたの? こんな遅くに」
「あの…少しでも休憩して欲しくって、食堂借りてお夜食作ったんですけど…」
れいりの手元にはお盆に載った食器と食事がある
「ありがとう、気遣わせてしまったね」
「いえ! 皆さん頑張ってるし、私出来るのこれくらいしか…応接室持って行きますねっ」
途中、気になった物を見つけ立ち止まる
「この地図光ってますね」
「そうだね。この光ってる箇所にアメがあるんだ」
「え!?」
びっくりしてもう一度よく地図を見る。
ソルムもじっと見ていた
「ディックさんが機転利かせて作ってくれて……正直今回はディックさんがいなければここまで効率良く進められなかったと思うよ」
「ディックさん凄い…」
話しながら応接室へ行く二人
「…そう、暗の作る異物は攻撃を主にした武器が多いのに対し明の異物はぱっと見利用目的が分からない物が多い。だから暗より危険だったりする」
「そうなんですか!?」
台に並べられていく夜食にジンホウはほっこり。
意外だったれいりは驚く
「使い方によっては非常に恐ろしい兵器になったりもするんだ」
「…」
「――ま、悪用するのは大抵暗だけどね」
れいりは盆を両手に抱え目がパチクリ
(そう言えば前にいざないもそんな事言ってた様な)
『悪気の無い質ワリーの多い』と言ってたいざないのムス顔が脳裏を過ぎる
「ソルムさん地図に釘付けだ」
(珍しいのかな…)
応接室と派長室の壁はマジックミラーになっており、そこの壁に貼り付けた地図の裏面とソルムの下部分が見えていた
「食器は後で僕が持って行くから君はもう休んで。ありがとう」
「あ、えっと」
自分の帯袋をゴソゴソ
「ハンカチありがとうございました。羽根拾って下さって…」
「ああ…そうだったね」
ジンホウはハンカチを受け取る
「れいり君は物持ち良いなぁ。捨ててしまっても構わないのに♪」←ハンカチすら忘れてた
「そっ…そんな、ジンホウさんの物捨てるなんて出来ませんよ!!」
両手を大きく左右に振り、あり得ないと強調する。
いつまでもお取り置きしてるれいりの性格にふとジンホウが思い出す
「…もしかしてまだあの手袋あるとか」
「もちろんです!! 大事に取って持ってます!!」
即答
「君ってばほんと…可愛いねぇ」 消耗品なのにあれ
「ええ!!?」 かっ…
笑い出すジンホウにびっくりして赤くなった
「あ…空いた食器だけ持って行きますね」
「食堂は方向逆じゃない? まとめて僕が持って行くよ」
「いいえっ 大丈夫! 大丈夫ですっっ」
大いに焦ったれいりは前のめりになりカチャカチャ食器を重ねていく。
近づいて来たれいりの顔を静かに眺めていたジンホウは、右手に持っていたハンカチを広げると自身の口をハンカチ越しに軽くれいりの口に重ねる

「こういう遮る物が間にあれば、明暗でも傷を負う事は無いんだよ」

実験の様な語りでれいりから離れると、ハンカチを持ち微笑んでいた
「…………」
〈このお茶温まるね〉
何事も無かったかの様にジンホウはお茶を飲む
「……へ?」
目点のれいりは思考が止まり台に両手を付け次の動きも止まっていた


「プリセプス、部屋に」
「あ…はい…」
応接室に顔を出したソルムに気付き返事
「…お休みなさいジンホウさん」
「おやすみ♪」

パタン

食器を持つこと無く部屋へ直行
「…これまた面白い反応だ」 ぷ
カップを持ち左手を口元に添え吹き出す

「記憶、飛んでる」

れいりはクマを持ち布団に潜り込む。
両手をパッチリとし目点のままだった

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