マルー・クインクエ【動き出すクインクエ】・・・6

マルー館内にある執務室。モニター画面には『羽マモノ イクナ山』と書かれた文字があり、夫人は両手で両腕をきっちり掴んで睨めっこしていた
「………」
「おかちちゃん、入道君から何か来た?」
「いいえ。この連絡以外は来ていません」
背後から不安げに尋ねる派長
「入道が調べていた“メレ ゲレフ”、細菌・微生物の研究者であり発明界の重役の一人…」
夫人は側に置いてある写真に目を向ける
「いさいがここにいたら締め上げるものを…」
「燃えてるよおかちちゃん」
ゴオオオオと怒りが込み上げ目に見える程の湯気具合に派長は冷や汗

「聞いてみるか?」

「T」
「私なら少しは聞き出せるだろう」
話を聞いていたTが夫人の所までやって来る
「T…これはあなた方に関わる件でありますか?」
「―――関係はなさそうだ」
「では力添えを甘んじる事は出来ません」
怒りで下がった眼鏡を定位置に戻す夫人
「程の起こした件ならば程が解決しなければなりません。そうですよね、T」
「……そうだな」
「混溶統者に会って発明界の捜索を出来る様に頼んでみます」

カッ カッ カッ カッ

「……」
機敏な足取りで夫人は執務室を後にした
「おかちちゃん、真面目すぎだよ…」 Tがしてくれるって言ってんのに
「…そうだな」
夫人の姿を目で追い派長は困ってた


*


――統者邸
何百もの近衛兵が護る塀の中はでかいガラス張りの円筒三棟に丸い帽子を被せた感じの目立つ建物がそびえ立つ

「ふーん。要するに、発明に捜索要請出せって事か」

政務室の入り口には二人の近衛が立っている。二人とも若く美しいが、統者邸では当たり前の事らしいのでこれ以上突っ込む事はしなくていいだろう
「マルーを正式に立ち会える様にして欲しいのです」
ラッパ型のパイプを咥えプカプカ煙が昇る向こう側では夫人が腕組みし難しい顔をしている
「ふーん……そう言えばお前んとこの息子何歳だ」
「……十九ですが?」
「ほうほう。もうそんなになるか」
カチャと咥えたパイプを机に置きゆっくり椅子から立ち上がった
「よし、息子を一ば…一日貸せ! それなら乗ってやらなくもない」
悠然たる笑いを浮かべ軍人が着る様な服をアレンジして着こなすマヌイ統者♀は上から目線でとても偉そうに夫人と視線を合わせる
「世界の危機になりうる可能性の状況を私利私欲に持ちかけるとは実に浅ましいですねぇ。何故混溶の統者があなたなのか全く不可解、混溶の謎です」
「おかち、あんたは思った事を一度心の中にしまい込む必要がある」
辛辣な言葉を顰め面で言う夫人に対し人差し指を突き立て指摘する統者
「ま、“中立のマルー”と言っても発明だけは中々介入しづれえんだよなぁ。それは良く分かる」
納得し胸の下へ腕を這わせうんうん頷く
「オレ様の名で入りたいとなれば、それなりの見返りをだな見返りを」 息子で良いって言ってんのに
「統者として恥ずかししと思わないのですか」
「全然」
「……」
どこの国でもある我が儘し放題の統者に呆れて言葉も失った

「―――分かりました。あなた向きの“異物”が手には入ったらお渡ししましょう」

「!」
目を伏せ溜息する夫人の言葉に統者の目の色が変わる
「………ただで?」
「ただです」

「私が気付かないとでも? 年が私と“大差ない”筈なのにその容姿風貌」
目をキラリ光らせ統者をチラリ
「胸元も昔より若々しくなってますねぇ」
「さすがだな、おかち」
「誰が見ても分かります」
統者の体付きを見抜かれ驚くが、きっと統者を知ってる人なら誰でも分かるレベルらしい
「ただ“副作用”に関しては保証しません」
「発明へ連絡を」

カチャ

「統者」
やっと承諾した統者が側近へ指示するが、入れ違いで違う近衛が政務室へと入って来た
「発明界からお電話が入っております」

「「!」」
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