マルー・クインクエ【研究所・数週間目】・・・4

「そりゃこえーな…」
「ですね」
ジンホウの説明に血の気が引く
「―――で、今の結果れいり君は安定でした」
「!?」
微動しないモニターのグラフをいさいは見直す
「見立て違いか?」
「いえ、本来なら基準内で良いと思います」
「じゃ、何でだ?」
「明の性質として、いつまでも引き摺ってしまう傾向があるんです」
椅子の背もたれに体を寄せ、推測した事を語り出す
「そして先程の様に二人は良くぶつかってる時があります。穏やかな明にしては考えられない行動です、これは黄金の死神も当てはまる事ですが」
腕組みし前のめりの姿勢に
「怒らせてしまったんでしょうね。いざない君が、れいり君を」
「……」
あいつならやるだろうな的な呆れ顔のいさい
「と言う事で、れいり君の基準内から外れたんです。いざない君が普通にいられるのは、れいり君が何とも思ってない事を知ってるからでしょう」
調理場では一生懸命に腕を振るうれいりと皿の出し入れに精を出すいざないがいる
「いざない君がれいり君をどう思ってるかは分かりかねます。先程彼は焦ってて観察出来ませんでしたしね」
違う場所では暗の異物を持ったTがインと別れて一人になっていた
「結果、博士が心配してる事は今時点で無いと言う事です」
「……そうか」 ほ…
解説を聞き胸を撫で下ろす
「でも男女の事だ。いつ歯車が噛み合うかも分からない。油断は禁物ですよ」
「こえ~事言うなよ…」
ジンホウは壁に貼り付けた紙を剥がし丸めて顎の所へ持ってくる。
余裕な笑みのジンホウに対しいさいは追加話にぐったりだ
「……ん? 完成したら大した問題で無くなるのでは?」
「大ありだし…………テネヴはいい…………暗と程の代表みてえなもんだ……一悶着あったとは聞く……だがいざないはヴェレの“息子”だぞ……」
ジンホウは上目遣いで考えるが、いさいはふらつきながら個室を出て入口へ向かう
「………今のうちに対策打たねぇと…」

パタン

「プリセプですもんね」
くすと笑い出て行った先を眺める
「これは大きな障害だ」

          *

カチャカチャ トントントン じゃ~~~じゃっ
「…」
ヒュヒュン シャシャシャ
静かに調理場の扉を開き、中を覗くいさい。
調理場内は戦場と化し皆の顔付きが真剣
「プリセプス」
シャカシャカシャカ
「先程の実験で気になった事がある」
「はい?」
ソルムの呼び掛けにれいりは振り向くが、手元は高速回転でひっきりなしだ
「ニューヴスのプリセプと私は何が違う? 違いが分からぬ」
「プリセプ言うな! いざないって言え!! 何回目だよ」
ソルムの疑問はれいりの不思議な動きの事らしい。いざないは自分の言われ方に不服で抗議している
「そりゃもう全然」 ぶんぶん
体ごとソルムに向け手元が止まると箸に刺さった食材が横に振られている
「天と地ほど違います」
「………」
「よそ見してっと焦げるぞ!!」
「あっ」 じゅ~
再び戦場となった調理場は湯気と熱気で満ちていた
(…今ん所はやっぱりセーフだな…でかい壁が嬢ちゃんにいるし……)
二人の関係を再確認したいさいは安心して扉を閉めかけた
「我がプリセプと果てたあの御方はプリセプには平常だった」
ソルムは自分なりに導いた見解を呟く
「平常であると言う事は“選ばれた”と言う事なのだな」 パッ パッ
「行くよー!」
「こい!!!」
淡々と味を調えるソルム。
周りの音が勝りソルムの語りは掻き消され二人には聞こえてない
(は!!?)
唯一聞こえたいさいの体が硬直
「……………ジ」
急いで通路を走る
「ジン―――――!!!」
「あら、ジンは出掛けたわよ」
「何ぃ!?」
「ここにいたか。そろそろ癇癪を起こす頃だ。行こう」
「テネヴ!? いや…ちょっと……!!!」
ベルムの言葉にギョッとし、大声に気付いたTがいさいの前に現れる
「まってくれ――――!!!」

ヴォン

移動する陣でいさいは連れて行かれた

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